金曜日、放課後になるとボクはひとりで旧視聴覚室へと向かった。

 ガラガラガラーッ

 ドアを開けると、まだ誰も来ていないようだった。
「あれ?おかしいなあ~奏のヤツ先に行くって言ってなかったか?」
 しょうがないのでパソコンをセットアップしていると何か違和感を感じた。
「え?えええーーーーっ!」
 そこには我が部のマスコット、ソーマくんの横にもう一体人形があったのだ。しかし……
「今度は女キャラ?」
 そう、もう一体はセーラー服に仮面をした…………
「奏か!奏だろ!なにフザケてんだよ!」
 そう、それは奏だった。
「えへへへぇ~ バレちった?やっぱソーマくんほどうまくできないやあ。ユニット組みたくて夜なべして仮面まで作ったのにぃ~」
「そか……オマエ……器用だな……」
「でもさ、なんか、時々ソーマくんって人形さんに見えることがあるんだよね……ほら…………」
 奏はソーマくんの腕をプラプラとさせている。
「…………どこまで天然なんだ?奏……」
「ん?なんかゆーたか?」
「い、いや、何でもない。ガンバれよ」
「うひょい!」
 でも、そ~いえばソーマくんって、もっと腕とかちゃんとワタが入ってた気がする。いちいち華音さんが作り直してるとも思えないし……気のせい……だよな……

 そんなことを考えていると、やがて華音さんがやって来た。北田先生と一緒だった。

「うわぁっ な、なんだオマエ!」
 先生が奏を見て大げさに驚いてみせた。
「奏とトーマくんだよ。ユニットを組むんだってさ」
「ほほう……それは、面白いかもしれないなあ……」
 何が面白いのか、先生はニヤリと笑った。

「ええーと、それでー何だっけ?ああーアレか拓人の発表だったよな。よし、早速やろう」
 が、やっぱり先生は今日も適当だった。
 先に来て準備してあったし、昨日遅くまでやっていたので眠くて、ボクも早く終わらせたくてスグに再生した。

「一曲に絞ったか。ま、無難だナ」



「おおー歌ってる歌ってる!スゴイじゃないか!」
 先生が一人で興奮している。
「まあまあね。こないだのよりはマシだわ……ほとんど私の歌詞のままだしね!」
 華音さんもほっとしたような表情を見せた。
「ブゥ~~~ ウチの歌詞がなーいー」
 奏は不満そうだ。
「あるだろ!」
「ドコに!」
「ここだよ!」


 本当のリアル

 それは突然の風にふりむいた
 キミの声がして
 胸の奥がキュンってした
 いつからだったろう?
 いつのまに僕ら
 歩き出したんだ
 いつでも君だけを見て
 すぎてゆく毎日
 同じような毎日
 永遠に変わらないと
 疑いもせずに……


「ほら『君だけを見て』って!」
「あ、ホントだ!うっひょおーーーい!」
 奏が単純でよかった。

「でも、この、ラララ~はナニ?これで完成のつもり?」
「や、やぁ~どうしてもサビ、思いつかななくて午前1時過ぎて、ラララにしておいたんだけど、そのまま……」
「そう。暫定版ってことね」
「そうそう。そうです」
 あわよくば、そのまま……とも思ってたけど、やっぱダメだった。
「んじゃ、そのへんもうまい具合に入れといてね!私の歌詞から!」
「は、はあ~ボ、ボクが、考えるんですかねえ~やっぱ」
 やりたくない、というワケでもなかったけど、編曲にもう少し時間をかけたい、というかかかりそうな気がしていた。
「うーん……そうだなあ~共同で作業、と言っても、なかなか難しいかなあ時間もないしさ。発表とやらができないと……先生も教頭に怒られちゃうんだよ。ハッハッハッハ」
 北田先生はそればっかだな。とはいえ
「分かりました」
 ボクは、そう言うしかなかった。
「それじゃあ、次は……月曜はダメだから火曜でいいか?」
「はい」

「あ、あと、もうちょっとテンポ早めにして、音数も足しておいてね!やっぱギターとか欲しいんじゃない?」
「ギ、ギターですか……」
 ギターはなんだか難しいんだよね……入力が……でも、なんだか華音さんもヤル気な感じがでてきたし、やってみるしかないよなあ。



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