「っていうかさ、最近、華音、あのちんちくりんとツルンでね~?」
「ちんちくりん?」
「なんだっけ、カエデ?」

 その日、ひさしぶりに華音さんを見た。もちろん、例の連中と一緒だった。ボクと奏はまた動くコトができず、その会話を聞くことになってしまった。
 それにしても……アレがカナちゃんなのか……
 なんとなく、奏の前ではもう、その話題は出せなかったが、忘れようったって、なかなかできない。逆に、よくも今まで忘れていられたもんだ。

「カナデじゃね?」
「そーそー、そのカネダ、カネダ」
「ちげーし」
「あんなのと一緒にいるとお前の評価もさがるぜ?」
「そんなこと……」
「ボランティアだろ、ボランティア。ほら、華音サマは国民的美少女目指してるから、あーいう素朴な要素が必要なんじゃね?そーだろ?」
「う、うん……」
「なーんだ、やっぱそーか。そ~だよなあ。華音サマがあんな連中と本気でつるむなんてありえねーし」
「でも、華音サマも人が悪いよなあ。利用できるもんは何でも利用するってか?」
「そ、そんなこと……」
「もーひとりの男も冴えねーしなあ」
「ちげーねー、ちげーねー、タクトだっけか。あの根暗男め」
「う、うん……」

 ワザと聞こえるように言っているのか?悪口というのは、いずれ本人の耳に入ってしまうものなんだ。

「ア、アイツら!」
 ボクは自分のことより、奏のコトをバカにしたのが何より許せないでいた。だって、だってカナちゃんなんだろ?

「いーよ、いーよ、いーよ。いーの、いーの、いーの。しょ、しょうがない、よね?華音タン美人だし、お金持ちだし、アイドルだし、あの取り巻き連中だって、どっかの大企業のボンボンだし、CMのスポンサーだっていうし、しょうがないよ。うん。ただ……ゴメンネ。こんなコトに巻き込んじゃってさ」
「謝んなよ!もともとボクはどうも思ってないよ。作ること自体が好きだからさ。その機会をもらえて感謝してるくらいさ。ただ……」
 ただ、今はこの奏の思いを踏みにじるのは許せないんだ。せっかく曲だってほとんどできてて、あとは、歌詞だから華音さんにも相談したいと思ってたのに……
 結局また部室にも寄らず帰ってしまって、数日が過ぎていった。


「アレよね?華音って今週末だったよね?ラジオ出んの」
「ん、ああ。そーだったな」

 別の日の放課後、奏とはなんとなく気まずくて一人で帰ろうとしていると、華音さんの取り巻きがいた。でも、華音さんの姿は見えない。

「大丈夫よね?」
「まー大丈夫っしょ。あんだけ言えば拓人だっけ?とかに泣きつくこともできないし」
「せいぜい赤っ恥かけばいいのよ!華音なんて!」
 え?
「おい!オマエら!なんだよ!どー言うことだよ!」
 思わずボクは飛び出していた。今までそんな行動したことなんてないのに。
「はあ?なにアンタ。叫んたりしてキモー」
 それはいつもの仲良さそうに華音さんのそばにいる、同じようにモデルをしているという梨花だった。
「ウルサイ!華音さんがなんだってんだよ!」
「あー、オマエ、あれ?拓人くん?怖い怖い~」
 男の方だって、いつもいっしょにいる仲間、のはずだ。
「ぶざけるな!ってんだよ!」
 思わずボクは男の襟元をつかんでいた。
「あらあら、ほんとイヤねえ。普段おとなしい子が……キレてるっていうの?どーせもう手遅れよ。週末のラジオに華音が出るって話し。あの子嘘ついてさ。フフフフフフ。せいぜい恥をかけばいいんだわ」

 華音さんが言っていたボカロの発表というのは、どうやらラジオだったらしい。前にその番組に出た時にVOCALOIDが話題に上がり、華音さんもやってます的なことを言ってしまったというのだ。それで、結局今度来るときに曲を持ってくるというコトになってしまったんだ。
 それなら、最初からそう言えばいいのに。しかし、ウソまでついて、そんなに注目されたいのかなあ。
「おい!オマエ!いつまで掴んでんだよ!いてーなーいてーよ~。コリャ慰謝料だな。知ってる?オレのオヤジ弁護士だからさ。訴えるからな」
「そ、そんな……オマエらのほうが先に……」
「はあ?先になんだよ!楽しくおしゃべりしてただけだろーが!」
「ハイ証拠~」
 いつの間にかボクが胸ぐらをつかむ姿がスマホで写されていた。
「ハイ終了~おしまーい、ジ・エンドねー」
「な、な、ちょっと、待てよ」
「ばーか、待たねえよ。まずは退学だな」
「フザ……」

 パシンッ

 ボクは思わず挑発にのって殴りかかりそうになっていた。すると、背後から平手が飛んできた。

「最っ低ね!アンタたち」
 それは華音さんだった。
「何すんだよ華音。オマエも退学になりたいのか?」
「勝手になさい。アンタのお父様には直々に私の父から連絡してもらうわ」
「ちっ」

 それで、連中が逃げるように帰ってしまうと、僕は、自然と華音さんと帰ることになった。



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